虐殺器官

近未来、暗殺を主任務とする特殊部隊に所属する主人公が、世界中で起った大量虐殺の原因となっている男を追うお話し。知人の奨めで読んでみました。
 
虐殺器官
  著者:伊藤計劃
 
始まりから終わりまで主人公目線で書かれている。この主人公に語らせることで近未来の世界を完璧に描いている。世界観、テクノロジーに関する構想力、想像力とその表現力には目をみはる。
 
だが、これは著者に対する評価であって、小説に対する評価は180度変わってしまう。この描き方では、主人公のタイムスケールで物語が進行してしまう。にも拘らず、この主人公が精神的な事、哲学的な事、テクノロジーなどについて、うだうだと思考する。この結果、小説自体が冗長で退屈なものになってしまっている。言い換えればスピード感が無い。スピード感が無いから緊迫感が無い。緊迫感が無いから物語に引き込まれない。残虐な殺し方を描いていても、全く臨場感がない。まるで作中に出てくる戦闘適応感情調整(少年少女を殺しても兵士の精神にダメージを与えないようにするカウンセリング)を読者が受けてしまったようなもの。
 
ストーリーにおいては、第四部のインド編は陳腐で余計。敵地に侵入するのも戦うのも脱出するのもスーパーテクノロジーなのに、インド国内での捕虜の移送におんぼろ列車って。おかげで先が読める展開。幾らなんでもこれは無いわ。興ざめもいいところ。
 
SF”設定”としては秀作。でも、アクションスリラーとしては駄作。溢れる才能に表現が負けてる。もったいない。
 

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