世界経済を破綻させる23の嘘

新年明けましておめでとうございます。
 
今年の抱負としまして、週一冊、本を読みます。三日坊主で終わらないため、その感想をここに書いてゆきます。よくあるあれです。え…目標が達成できなければ坊主になると言うあれです。えぇっと…そう、”宣言”ですね。ただし、続かなくても坊主にはなりません(^^
 
世界経済を破綻させる23の嘘
著者:ハジュン・チャン
 
その第一冊目がこの本なわけですが、新聞で10行ほどの説明文と共に案内されていたのを見て、読んでみる気になり即注文。しかし、届いてびっくり350ページ!本当に一週間で読めるのかと不安になりました。結局三日遅れで感想文のUPです。
 
さて、この本。タイトル通り経済の本なんですが、一般向けに書かれているので非常に読みやすい。難解な専門用語もなく、身近な例からの引用も多く分かりやすい。著者はソウル生まれで、イギリスの大学で教える経済学者。そのためか、取り上げる話題が欧米に偏らず、日本や韓国についても冷静に分析、評価している点も読みやすさにつながっています。いま起こっている経済問題に興味があるならお薦めです。
 
この本を一言で区分けすれば、『”反”自由市場主義』本。日本では『”反”新自由主義経済』本と言うのが分かりやすいでしょうか。こう書くと小泉政権の経済政策の批判になるかと思いきや、実際の『新自由主義経済』は、どうやらあんな生易しいものではなさそうです。この本では、規制撤廃を掲げる『自由市場主義』者たちに対して、児童労働の規制を例に挙げ、自由市場なんて錯覚さ、と切って捨てます。私なんかから見れば極端な例にしか見えませんが、自由市場の本家イギリスでは有効な論法なのでしょう。ですから日本でやり玉に挙がっている小泉政権での経済政策、その政権の中枢部にいた人たちも、真の自由市場、『新自由主義』なんて理解しておらず、ただ流れに乗った、或いは乗らざるを得なかったということではないでしょうか。しかし、最近よく言われるように、そうであるならセーフティネットのことも同時に考えておくべきだった事は本書でもスカンジナビア諸国を例に指摘されていますが、同時にそれは小泉政権に限らず、過去二十年間について言えることで、小泉政権をやり玉にあげるためだけに『新自由主義』とのレッテルを張って批判したのでは、問題を矮小化している事にしかなりませんし、そもそも理解していない政権に正しい対処ができるわけはありません。
 
少し脱線してしまいましたが、BIS(国際決済銀行)規制、時価会計の導入、株式持ち合いの解消、高額所得者への減税、法人税減税、大規模店舗法の廃止、株式市場活性化、株主の優遇、経営者の高額報酬、低インフレ率を求める政策、これら全て間違いで、その結果低成長、所得格差の拡大、雇用の不安定化を招いたということが本書には実例を示しながら書かれています。素人である私に、この論が正しいのか誤りなのかは判断できませんが、豊富な例とそれを裏付ける資料、論の飛躍の無さから説得力があります。本書の内容が理解できるかと問われれば理解できると答えるでしょう。支持するかと問われれば支持すると答えます。
 
ここでもう一つ、日本人として見過ごせない記述があります。自由市場が大好きな、つまり『自由市場主義』の手先として国際金融機関(IMFや世界銀行)、WTO(世界貿易機関)、BIS(国際決済銀行)が挙げられています。私が見たところ日本では『”反”新自由主義経済』『反小泉政権』のエコノミストやメディアでも、これら機関の言う事を御託宣のごとく無批判に受け入れているのではないかと思います。真の敵は何なのか。立場や主義主張の違いを越えて、よく考えてみる事です。
 
そしてもう一つ、『自由市場主義』者によってもたらされたものに、「取引可能な排出権」なるものがあると挙げられています。本書では二酸化炭素とは書かれていませんが、こういった取引市場にも注意すべきです。ですが日本においては、『新自由主義』批判をしている人が、排出権取引を批判しているのを見た事がありません。
 
このように本書を読むと、23の嘘がいかに深刻で複雑で広範囲に及んでいるのか、右も左もその罠に陥っているのかが分かって来ます。ではどうすれば現在の世界経済を立て直せるのか。著者は「必要なのは世界を支配してきた自由市場経済学ではなく、それとはちがう経済学である。」「途上国に”政策を自由に立案・実行する余地”を与えるために、世界経済システムをいちど完全にオーバーホールする必要がある。」などなどいくつか示しています。では日本でそれができるのか。先ほども書いたように私の認識では、世界経済の潮流に乗らざるを得なかった。その時、スカンジナビア諸国のように出来なかったのは、それらの国に比べて人口も経済規模も大きいから(あるいは事態を理解していなかったから)。そして、対米追従だから。それは安全保障上そうせねばならないから。
 
では、現状はどうか。残念ながら?経済危機の後もそれまでの政策を採用している。日本は一周遅れで法人税減税を実現しようとしている。TPPにも参加しようとしている。相変わらず高額所得者への高累進課税復活には反対している。米軍基地問題に見るように、安全保障面は従来のまま。(本書には安全保障やTPPは出てきませんが、関税等の貿易障壁をなくすことには反対。外国人移民による低賃金労働者の規制撤廃にも反対。また、PIIGSなどの公的債務の話も出てきませんが、実体経済より金融が肥大化した事は『自由市場主義』の影響との考えです。)
 
まとめ
・少なくとも過去二十年間、経済政策は一貫している。違うのは財政政策だけ。そして、より大きな問題は経済政策にある。(誤解がある表現ですけど、私にはこれが限界。一貫して小さな政府を目指していたが、財政政策で大きい小さいを論じてしまった。)
・経済政策で独自性を発揮するには、対米追従をやめる事。つまり完全ではなくても安全保障面で自立する事。そして、世界から非難されても気にしない事。
・次の選挙では以上の事から候補を選ぶ。
・『自由市場主義』は舌を噛みそうだ。
 
え…なんという結論(^^
これはもう本の感想ではないな。
 

世界経済を破綻させる23の嘘」への2件のフィードバック

  1. ダイ

    すばらしい決意ですね。ぜひとも、坊主頭になってください(^-^)
     
    経済学の話して、あちらを立てればこちらがたたず、試行錯誤の上、修正しながら
    なんですが、結局究極の政策なんて結局は無いんでしょうね。
     
    現在の日本国、他国から見たら、極めて順調なんでしょうが、その国にいる
    私たちはとても不満。
    しかしながら暴動が起るわけでもなく、革命が起るわけでもなく。
     
    これこそがそこそこ上手くいっている秘訣なんだと思います。
     
    日本国は独裁政治に極めてなりにくい仕組みです。一見、凄く歯がゆいのですが
    これが円満の秘訣でこの国に合ってるのでしょうね。
     
     

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  2. 大塚

    だから坊主にはならないですって(^^;
     
    究極の策は無いですね。
    結局はゼロサムですから、誰かが得をすれば、誰かが損をする。
    得と損の差を少なくするのに自由市場(弱肉強食)では無理で、規制したほうがマシではないか、と言うお話です。
     
    ただし、高度成長の頃なら損をする人の割合も少ないので不満も少ない。
    今のようにデフレの時には、損をすると結構きついので不満が出ます。
     
    ですから暴動や革命に向かっているとも言えますよ。
    例えばドロボウに入られて、幾らの被害なら警察へ届けるかと同じようなものです。損をした側が、いつ声を上げるかですね。そういう意味では民主主義というのは権力者にとっては、いいガス抜き装置とも言えますね。

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